文化財防災ネットワーク

CH-DRM Network,Japan

National Task Force for the Japanese Cultural Heritage Disaster Risk Mitigation Network

調査研究

防災・救出・保全・継承に関する調査研究

文化財所在情報のデータベース共有化

防災及び自然災害発生時の救出・保全活動に資するデータベースについて、調査研究と実践的な作成を行い、将来における文化財データベースのあり方についての提言を行います。

(1)地方指定等文化財に関する収集・整理・共有化

国指定文化財については、文化庁の「文化遺産オンライン」「国指定文化財等データベース」がありますが、地方指定文化財に関してはいまだに十分な統合が図られていません。動産・不動産文化財、無形文化財も含めて、地域所在の文化財に関してデータベースの構築・統合を図ることで、平常時における防災対策に貢献し、災害時には速やかに被害状況を把握するための基礎を作ることを提案していきます。

(2)歴史自然災害の考古学的痕跡データベースの構築

1万件を超える考古発掘調査地点データと800件を超える災害痕跡のデータをもとに、歴史的な自然災害に関する痕跡データベースを構築しています。これにより、文献資料に記されていない災害の歴史や、それよりもはるかに昔の自然災害についての情報を得て、今後の防災に役立てることを目指します。

無形文化遺産の記録作成に関する調査研究

琵琶製作技術の全工程を記録している様子。
無形文化遺産の防災のための動態記録作成に関する調査研究(平成29年度)

甚大な被害をもたらす自然災害は、時に地域コミュニティをも破壊します。それにより、地域で行われていた年中行事や生業が失われることもあります。一方、それらの行事を復活させることによって、また生業の技術を復元することによって地域再生の力となることがあります。万が一の場合に無形文化遺産が失われることを防ぎ、地域コミュニティ復活の手がかりとすることを目的として、動態記録の作成方法についての研究を行っています。

文化財レスキュー活動に関する動態記録作成

レスキュー活動がどのように行われたかの動態記録を残すことにより、活動を検証し、今後の適切な活動実施のために活かします。また、被災資料の保全処置について、その手順を分かりやすく動画にまとめ、文化財防災のための研修・啓発活動や実際に災害が発生した場合の作業実施において参照できる資料を作成します。

地域の文化遺産保全地図情報作成調査

地域の文化遺産を自然災害等による消滅から守るため、分野横断的な総合的リストを作成するとともに、既存資料を有機的に結びつける文化遺産保全地図(デジタルマップ)をモデル的に作成しています。この作業は、和歌山県有田郡湯浅町、広川町、両町の文化財所蔵者、関係機関の協力を得て実施しています。

被災文化財等の保全処置、保存環境等に関する研究と指針の策定・公開


汚損紙資料のクリーニング処置例を紹介する動画を、専門家の監修のもとで制作し、DVD化。耐水加工を施した冊子版も発行。

文化財は災害の規模や内容によって、様々な状態で被災します。迅速な救出と保全処置は必須であり、そのためには参考となる手引きが用意されていると、現場の助けとなります。 そうした各種の手引きはすでに多くの関係団体や専門家によって作られていますが、被災の状態によっては既存の方法を単純に当てはめることができない場合があります。また、初期に施した保全処置がその後の経過観察によって別の課題を生じさせていると分かる場合もあります。国立文化財機構は、文化財研究所の保存修復技術研究部門の他、各国立博物館にも文化財保存科学を専門とする研究員を配置しており、さらに外部の専門家の協力も得ながら、保全処置の方法や仮設の施設等における保存環境の維持などに関する研究を行っています。
平成29年度には、文化財防災マニュアルとして、汚損した紙資料のクリーニング処置に関するDVDを作成し、動画をウェブ上に公開しました。

遺跡出土自然遺物及び自然史標本の防災・減災に資する調査研究

出土自然遺物の所在情報の収集のため標本の現状を調査・整理し、目録を作成している様子。
無形文化遺産の防災のための動態記録作成に関する調査研究(平成29年度)

被災地の収蔵施設に保管されている被災した遺跡出土の動植物遺存体について調査を行うことで、防災・減災のための保管・管理体制を検討しています。また、地方公共団体等における自然史標本の所在情報を収集し、事例として奈良文化財研究所が所蔵する貝類標本のリストを作成することで、所在情報の共有・公開のあり方を検討しています。

文化財が被災した災害に関する事例集の作成

文化財被害は災害によって毎回異なるため、一つのマニュアルでは対応しきれない可能性があります。過去に発生した自然災害で文化財に被害が出たケースを調べ、被害の内容とその救出・復旧のために当時どのような行動がなされたかを事例集としてまとめておくと、今後の災害による被害に対応するヒントが見つかるかもしれません。

自然災害の発生による文化財の被災への対応を通じた様々な検討

遠野市立図書館資料の乾燥の様子。
水損紙資料の安定化処置および修復方法に関する研究(平成29年度)

頻発する自然災害に対して、専門家の派遣、技術や情報の提供を行っています。また、近年実施された救出活動に関する分析を行い、体制づくりや技術的な課題への取り組みの参考にしています。 平成28年4月に発生した熊本地震では、文化庁の呼びかけで実施された文化財レスキュー事業を熊本県と連携して推進しました。同年8月の台風被害により水損した岩手県遠野市立図書館の図書資料2,500冊に関しては、同図書館との連携のもと迅速な搬出と冷凍処置の実現をテーマとして実験的な取り組みを行い、被害発生後1 週間以内の冷凍保管を実現し、資料の重要度と被害の程度に応じた処置作業の分担を行った結果、黴などの被害を出さずにすべての資料を返還することができました。平成29年7月の九州北部豪雨では、福岡県が県内の連携体制によって迅速な被災文化財の救出作業を実現しました。これらの中小規模の災害から得られる知見と経験を積み重ね、将来の大規模災害発生に備えようとしています。

博物館・美術館における展示・収蔵品の安全対策に関する研究

地震が頻発する我が国では、古くから建造物に耐震構造の設計が求められ、博物館・美術館では特に阪神淡路大震災での被害を教訓として、免震台をはじめとする器具の改良・開発が続けられています。古い施設や経費の困難によって最新の装備を導入できない場合もあります。現場の状況に応じ、どのような安全対策を講じるのが良いのか、という課題について研究を進めています。