文化財防災ネットワーク

CH-DRM Network,Japan

National Task Force for the Japanese Cultural Heritage Disaster Risk Mitigation Network

文化遺産防災国際シンポジウムを開催

2016年12月13日、文化財防災ネットワーク推進本部の主催により、京都国立博物館で「文化遺産防災国際シンポジウム―文化遺産を大災害からどう守るか:ブルーシールドの可能性―」を開催した。「明日の京都」文化遺産プラットフォーム、ICOM日本委員会、日本ICOMOS国内委員会が共催に加わった。
ブルーシールドは、ICOM(国際博物館会議)、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)、IFLA(国際図書館会議)、ICA(国際公文書館会議)、CCAAA(視聴覚アーカイブ協会調整協議会)の国際NGOから構成される武力紛争や自然災害から文化遺産や博物館、図書館、公文書館等を守るための国際的ネットワークで、文化遺産の赤十字ともいわれる。第二次世界大戦で多くの文化財が失われた反省に立ち、1954年、オランダのハーグで武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)が採択されたのがきっかけで生まれたものだ。現在、世界の26カ国に国内委員会が設置され、22カ国で準備中だが、アジア諸国ではまだ国内委員会は設立されていない。東日本大震災において文化財レスキュー活動を展開した国立文化財機構では、3年前からブルーシールドに関する研究を進めており、今回は諸外国でブルーシールド活動を展開している専門家を招へいし、このシンポジウムを開催した。海外からの招へい者は、ユネスコ太平洋事務所の高橋暁博士、国際ブルーシールド委員会事務局長のピーター・ストーン博士(イギリス・ニューカッスル大学)、ICOMの災害対策タスクフォース(DRTF)の委員長であるコリン・ウェグナー氏(アメリカ・スミソニアン機構)、ブルーシールドオーストラリア委員会のスー・ハトリー氏(クイーンズランド工科大学図書館)。コリン・ウェグナー氏は、陸軍出身で、ブルーシールドUS国内委員会の元委員長で、2012年9月にも文化遺産国際協力コンソーシアム研究会を開催した際に招へいし、昨年3月の国連防災世界会議で来日している。同じく国連防災世界会議で来日したピーター・ストーン博士によれば、ICBS(the International Committee of the Blue Shield)とANCBS(the Association of National Committees of the Blue Shield)の二つに分かれていた組織を一本化し、Blue Shield International という組織に再編するとのことであった。
第二部では、ネパールICOMOS委員長のカイ・ワイズ氏及びネパールICOM委員長のバラト・ラワト委員長からネパール大地震後の被災状況について報告してもらい、この機会に日本博物館協会の半田昌之・専務理事より、ネパールの文化遺産支援のための集められた義捐金の贈呈式が行われた。
第三部は、京都の文化遺産を災害から守る取り組みについて、土岐憲三・立命館大学教授のほか、京都府文化財保護課及び京都市消防局からそれぞれ具体的な報告が行われた。続いて筆者をコーディネーターに、諸外国からの招へい者に加え、井口和起・京都府立総合資料館顧問、佐々木丞平・京都市内博物館施設連絡協議会長(京都国立博物館長)、地主智彦・文化庁美術学芸課文化財調査官、矢野和之・日本イコモス国際委員会事務局長が登壇してパネルディスカッションを行い、理解を深めた。
翌14日には、関係者だけでより具体的な打ち合わせを行い、さらにそのイメージを固めることができた。ピーター・ストーン博士によれば、国によって国家体制や文化財保護制度が異なることから、ブルーシールドの活動も国ごとに千差万別である、とのことであった。日本型のブルーシールドは、自然災害に重点を置きつつ、行政機関と密接に連携した体制づくりが求められると考えられる。災害救助に携わる自衛隊、警察、消防などが、人命救助を第一としつつも、文化遺産防災の認識を高めることも必要であろう。国立文化財機構では、ブルーシールド日本委員会の設立に向けて、引き続き検討を進めていくこととしている。

栗原祐司((独)国立文化財機構本部事務局長)
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