文化財防災センターの概要

趣旨

国立文化財機構は、頻発する各種の災害から文化財をまもり、災害発生時の救援・支援を多くの組織や専門家の協力によって迅速かつ効果的に実施するため、文化財防災センターを開設しました。奈良文化財研究所に文化財防災センター本部を設置し、全国の文化財防災のための取り組みを行います。

3つのミッション

  • 被害を出さない(=事前の備えをしっかりとしておく)
  • 被害が出てもその度合いを最小限にとどめる(=正確な情報の収集、的確な判断、そして迅速な行動)
  • 重篤な被害が出た場合の救援・支援を効果的に実現する(=体制の準備と機能)

事業の5つの柱

地域防災体制の構築

地域内連携体制の確立促進
都道府県及び市区町村行政部門の文化財担当者、博物館・図書館・文書館等の施設及び協会、地域史料ネットワーク等へのヒアリング・調査を行い、各地で開催される地域連携に関する会議に積極的に参加することで、災害が発生した際、災害状況等に関する情報共有が迅速に行われるための地域ネットワークの構築に協力させていただいています。
「地域防災計画」に必要な文化財関連項目の調査研究・提言
「災害対策基本法」に基づき作成された「地域防災計画」には、都道府県それぞれに「文化財の防災」に関する記述があります。しかしそれは都道府県の事情によって異なる内容となっており、それに沿った実際の体制が作られていない場合もあります。東日本大震災を経て「地域防災計画」の見直しが図られる中、推進事業による地域連携体制に関する調査研究の成果を活かし、先進的な体制を構築しつつある自治体を参考としつつ、文化財に関連する項目に関して平時の組織づくりや災害時の初動体制のさまざまなパターンを示し、地域における文化財防災に貢献することを目指します。 地域防災計画について

災害時ガイドライン等の整備

文化遺産防災ネットワーク推進会議進
文化遺産防災ネットワーク推進会議は、さまざまに異なるジャンルの文化遺産に関係する団体が参加し、情報共有を図り、事前の備えによって文化遺産を災害からまもり、災害発生後の救援・支援活動を迅速かつ効果的に行うためのネットワークを構築しています。 推進会議参画団体一覧
災害発生に備えた活動ガイドラインの作成
不意に発生する自然災害に備え災害発生時の活動ガイドラインを作り、文化財関連の団体や専門家が組織間・地域内連携の機能を発揮して、迅速かつ効果的な行動を取るための手がかりとします。 ガイドラインについて

レスキューおよび収蔵・展示における技術開発

文化財防災のための技術的連携体制構築に向けた検討
自然災害等が発生し、文化財が被災した場合の一時保管先として使用することもできる収容施設・冷凍保管庫・真空凍結乾燥装置等の確保について、各地の状況に応じた対策を講じるための検討を行っています。また、文化財を迅速に避難させるための輸送手段の確保に関しても、関連企業等との検討を行っています。
被災文化財等の保全処置、保存環境等に関する研究と指針の策定・公開
文化財は災害の規模や内容によって、様々な状態で被災します。迅速な救出と保全処置は必須であり、そのためには参考となる手引きが用意されていると、現場の助けとなります。 そうした各種の手引きはすでに多くの関係団体や専門家によって作られていますが、被災の状態によっては既存の方法を単純に当てはめることができない場合があります。また、初期に施した保全処置がその後の経過観察によって別の課題を生じさせていると分かる場合もあります。文化財防災センターは専従の研究員に加え、文化財研究所の保存修復技術研究部門、各国立博物館にも文化財保存科学を専門とする研究員を併任として配置しており、さらに外部の専門家の協力も得ながら、保全処置の方法や仮設の施設等における保存環境の維持などに関する研究を行っています。
博物館・美術館・社寺等における展示・収蔵品の安全対策に関する研究
地震が頻発する我が国では、古くから建造物に耐震構造の設計が求められ、博物館・美術館では特に阪神淡路大震災での被害を教訓として、免震台をはじめとする器具の改良・開発が続けられています。古い施設や経費の困難によって最新の装備を導入できない場合もあります。現場の状況に応じ、どのような安全対策を講じるのが良いのか、という課題について研究を進めています。

普及啓発

研修の実施
自然災害によって文化財に被害が発生した場合には、専門的な知識に基づいた行動を取ることが必要です。このため、地方公共団体の文化財担当者等を対象とした研修会を開催しています。その他、災害救助に従事する消防署員や文化財の搬送作業に関与する運送業職員への研修なども有効です。また、我が国の経験を外国の文化財防災に役立てることを目指して、国際的な研修プログラムやシンポジウムに講師を派遣し、積極的に参加しています。
シンポジウム・研究会の開催
本事業を広く社会に認識してもらい、地域の人々に文化財防災の重要性を理解していただくために、各種のシンポジウムを開催しています。また、国内の専門家同士が技術や地域文化財の保護の理念について理解を深めるための研究会も開催しています。さらに国外の専門家の経験に学び、より専門的な知識を得るために国際シンポジウムの開催にも取り組んでいます。
ウェブサイトでの情報公開
本事業の活動について、随時情報の発信公開を行っています(当HP)。関係各団体が文化財防災に関して行っている様々な活動を紹介し、日常的な備えとしての文化財防災の必要性や、いざという時の連携協力の重要性について、広く理解を得ることを目標としています。また自然災害発生時の情報収集など、即時的な対応を目指しています。

文化財防災に関する情報の収集と活用

文化財防災に携わる団体の活動に関する情報の収集
いま国内では文化財防災についての関心が高まり、地方公共団体や地域内の文化財関連団体、文化遺産防災ネットワーク推進会議に参加する団体、地域内における歴史資料を研究する大学や博物館・資料館等に所属する専門家たちを中心に組織された地域史料ネットワークなどが、様々な活動を行っています。こうした研究交流集会やシンポジウム、出版物の刊行などについての情報を収集し、ウェブサイト等を通じて共有化を図ります。
文化遺産の防災に関する有識者会議
文化遺産や防災に関連する様々な分野で活動をしている学識・経験豊富な方々から意見を頂戴し、文化財防災ネットワーク構築のための提言をまとめることを目的に、「文化遺産の防災に関する有識者会議」を設置しています。現在1 1 名の有識者で構成されており、年2 回開催しています。 有識者一覧
文化財所在情報のデータベース共有化
防災及び自然災害発生時の救出・保全活動に資するデータベースについて、調査研究と実践的な作成を行い、将来における文化財データベースのあり方についての提言を行います。
地方指定等文化財に関する収集・整理・共有化
国指定文化財については、文化庁の「文化遺産オンライン」「国指定文化財等データベース」がありますが、地方指定文化財に関してはいまだに十分な統合が図られていません。動産・不動産文化財、無形文化財も含めて、地域所在の文化財に関してデータベースの構築・統合を図ることで、平常時における防災対策に貢献し、災害時には速やかに被害状況を把握するための基礎を作ることを提案していきます。
歴史自然災害の考古学的痕跡データベースの構築
1万件を超える考古発掘調査地点データと800件を超える災害痕跡のデータをもとに、歴史的な自然災害に関する痕跡データベースを構築しています。これにより、文献資料に記されていない災害の歴史や、それよりもはるかに昔の自然災害についての情報を得て、今後の防災に役立てることを目指します。
文化財が被災した災害に関する事例集の作成
文化財被害は災害によって毎回異なるため、一つのマニュアルでは対応しきれない可能性があります。過去に発生した自然災害で文化財に被害が出たケースを調べ、被害の内容とその救出・復旧のために当時どのような行動がなされたかを事例集としてまとめておくと、今後の災害による被害に対応するヒントが見つかるかもしれません。