• 文化財防災に関係する情報の収集と活用| 東京文化財研究所
更新日:2021年3月31日 00:00

【東文研】阪神淡路・東日本両震災の救援委員会記録の整理・分析研究

阪神・淡路大震災から東日本大震災、直近の熊本地震と三つの大規模な災害時に行われた文化財レスキュー活動をそれぞれの活動日報の記述に基づき、日報データを比較分析した。それぞれの災害時に文化財レスキューの現場で何が起きていたのか、そしてそれは時代の流れとともにどのように変遷していったのかを数値に基づく客観的な評価とその可視化を試みた。また、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の被災文化財等救援委員会の日報分析を比較検討するにあたり、阪神・淡路大震災当時の関係者にヒアリングを実施した。ヒアリング調査をすることでデータ分析の精度を上げ、日報の分析結果から明らかになった当時の状況に齟齬がないかを確認をした。本事業のデータ分析から日報などの詳細な活動記録をデータとして保存・蓄積し、かつ分析可能な状態に整備して後世に残し、過去の事象を客観的に把握することで、将来に備えた有意義な記録作成の在り方や体制作りに資することが明らかになった。

 今後の課題として、異なった災害時の被災文化財等救援委員会活動の類似性に基づいて、具体的な活動の普遍的なパターンをより詳細に掘り起こし、有事の際に利用可能な形で可視化・マニュアル化を進めていくことが考えられる。将来的にはこれまでの結果と合わせ、事前に文化財の種類と所在状況などをデータ化することができれば、災害発生時にどの地域でどのような人材・活動内容が必要になるかおおよその見当をつけた上で、災害時の限られたリソースを有効に活用して活動を展開することも可能になるのではないかと期待される。