• 文化財防災に関係する情報の収集と活用| 九州国立博物館
更新日:2021年3月31日 00:56

【九博】令和2年7月の球磨川流域の豪雨災害時の支援(人吉市)

発災時の対応

2020年7月3日の夜から4日にかけて続いた豪雨の影響により、熊本県の球磨川流域を中心とした地域で河川の決壊による甚大な被害が発生し、八代市や人吉市などの地域で水害が発生した。
7月5日に文化庁と文化財防災ネットワーク事務局が被害状況について情報共有し、文化財防災ネットワーク事務局が県文化課と連絡をとり、県文化課から人吉市に初期対応の方法について連絡した。また、九博より7月6日に県文化課にお見舞いとともに、東北大学の蛯名氏による県文化財マップデータ情報を送付した。
7月7日に県文化課が人吉市(人吉城歴史館)に入り、古文書などの資料の被災状況を確認した。古文書類を中心に県施設が預かり、乾燥等の初期対応を県で実施することになった。また、県指定の工芸品なども県施設に搬出し、初期対応を行う予定となった。このことについて県文化課より文化財防災ネットワーク事務局宛に九博防災担当者の保存処理等に係る派遣協力依頼があった。
7月8日九博木川より県文化課宛にメールで古文書、美術工芸品(甲冑、掛け軸など)の応急処置法について連絡し、710日九博から木川、小川が熊本入りすることとなった。

・現地での応急処置協力

7月10日、博物館NWCにて、県美1名、文化課3名、博物館NWC3名、九博2名で、前日に人吉城歴史館から当施設に搬入されていた甲冑類、刀剣(出土遺物)、馬具(県指定品)、民具、ネガフィルム・ポジフィルムなどの被害状況を確認し、吸水、風乾等の応急処置を実施した。また、同日、熊本県文化財資料室においても、人吉城歴史館から当施設に搬入された陣羽織などの染織品、掛軸5点、べっ甲の櫛、簪などの被害状況を確認し、吸水、風乾等の応急処置を行なった。

・応急処置や修理に係る問い合わせへの対応

7月中旬以降、10月中旬まで、県美、県文化課、くまもと文学・歴史館などから各種文化財や文書などの応急修理や修理に係る問い合わせがあった(全14件)。対応にあたっては、分野に応じて九博の修理事業担当者や工芸の学芸員、修復施設の技術者、奈良文化財研究所の防災ネットワーク担当者、大学の専門家などの意見も求めたうえで回答した。
主な問い合わせ内容は以下の通りである。
・水損した絹本絵画と書跡などの乾かし方
・絵画や銅製の仏像に泥が固着している場合の処置
・被災した明治から大正期の資料の処置
・水損してカビが発生した文書の裏張りがある襖の乾燥方法
・被災した絵画の修復方法
・海岸に漂着した仏像の処置
・水損して乾燥した掛軸に発生しているカビの処置法
・泥が付着した甲冑の対処法
・水損したユスの木(木材)の対応
・県指定重要文化財の修復方針
・カビの生えた仏像の対処法
・水損して泥で汚れた金工品の対応と修理方針
・乗物(駕籠)の修理