• コラム| 文化財防災センター
更新日:2024年7月11日 14:40

文化財防災センターの成り立ちと仕事

 文化財防災センター(以下、当センターと称する)は、国立文化財機構内に設立された組織です。まだ若い組織ですが、1月の石川県能登半島地震をはじめ、地震や豪雨、火災、土砂災害など、設立当初からこれまでに発生した災害から文化財を救出、救出した文化財の修理修復や保管、復旧などを関係組織の協力のもと行いました。今年10月で設立4年になります。ここでは、当センターの成り立ちと日常的に行っている仕事について、お話しします。

 今から13年前の2011(平成23)年に発生した東日本大震災では、地震や大津波により甚大な被害がありました。この時に国立文化財機構は文化庁からの要請を受けて、東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会を組織して、被災文化財の救援(文化財レスキュー)を実施しました。この事業は、2011年から2年間にわたり実施されました。その後、救援委員会は解散いたしましたが、2014(平成26)年度から6年間にわたり文化庁の補助金を受けて国立文化財機構内に文化財防災ネットワーク推進室を設け、「文化財防災ネットワーク推進事業」を取り組んでまいりました。この事業では、わが国の文化財防災の体制構築を図るとともに、文化財防災のマニュアル作成や救出の初期対応に係わる研修会等の実施を行ってきました。そして、この時の成果を基に、2020(令和2)年10月1日に国立文化財機構の本部施設として当センターは設立されました。

 当センターは、①地域防災体制の構築、②災害時ガイドライン等の整備、③レスキューと収蔵・展示における技術開発、④普及啓発、⑤文化財防災に関する情報の収集と活用、の5つの事業を柱として取り組んでいます。以下に、昨年度(令和5年度)の活動について、5つの事業からその一部を紹介します。
①地域防災体制の構築では、ヒアリング調査を実施して、当センターと都道府県の文化財保護行政担当者との連携体制を図るとともに、災害発生時におけるレスキュー活動の連携体制や都道府県間の広域連携による相互支援体制の支援等の実態把握を進めています。また都道府県で行われている文化財防災に関する協議会や研修会等に参加して、事業報告や情報交換等を行いました。②災害時ガイドライン等の整備では、救援活動時の作業環境や一時保管場所構築に係るガイドラインを順次策定しており、これまで文化財の放射線対策ガイドブック、室内労働環境の浮遊カビの測定 ・ 評価と浮遊カビ等からの防護に関する管理基準、浮遊カビ等からの人体の防護に関するマニュアルなどを、関係組織と協力して作成しました(https://ch-drm.nich.go.jp/facility/2022/03/post-49.html)。そのうち、室内労働環境の浮遊カビの測定 ・ 評価と浮遊カビ等からの防護に関する管理基準、浮遊カビ等からの人体の防護に関するマニュアルについては今後、諸外国で活用できるよう英語版を公開する予定です。③レスキューと収蔵・展示における技術開発では、一時保管場所のおける文化財の劣化要因の許容範囲の明確化、消火設備の現状と課題、立体作品の転倒防止に関する研究など、被災の原因究明や対策などに関する研究を進めています。④普及啓発では、視聴覚資料の応急処置ワークショップや一時保管環境の生物被害対策ワークショップ、文化財防火デートークイベント、研修集会などを開催しています。特に昨年度は研修事業の充実を図るため、被災文化財対応基礎研修のオンライン研修を開催しました。⑤文化財防災に関する情報の収集と活用では、各団体の講演会や大会に参加して情報収集を行いました。特に昨年は関東大震災から100年を迎え、各団体において多くの講演会や展覧会が開催されたことから、それらに参加して日本における防災と災害復興に関する取り組みの情報収集を行いました。これら以外にも受託事業の実施や他団体との共催で国際会議を開催などの活動を行いました。

 我々の活動についての詳細は、文化財防災センター年次報告書に掲載しております。HPからも閲覧できますので、この機会にぜひ、ご一読いただければ幸いです(https://ch-drm.nich.go.jp/facility/2024/06/5-3.html)。


(アソシエイトフェロー 小峰幸夫)