• 地域防災体制の構築| 九州国立博物館
更新日:2021年2月25日 00:27

【九博】佐賀県の防災事業への取り組みについての聴き取り調査

・概要

平成30年度から令和元年度にかけて、九州各県を訪問して県の防災事業への取り組みについて聴き取り調査を行ったが、佐賀県は平成30年と令和元年の豪雨やその後のコロナ感染症の状況から、訪問の機会を得られなかったため、令和2年度にオンラインにて聴き取り調査を実施した。

開催日時: 令和3225日(木)ウェブ会議
出席者:佐賀県地域交流部 文化・スポーツ交流局 文化課文化財保護室2名、九博4

・「文化財保存活用大綱」について

佐賀県では、令和210月から令和3年度までの2年間で「文化財保存活用大綱」を策定する予定である。県文化財保護審議会内の臨時部会にて内容を検討し、3名の外部アドバイザーに助言を受けることとしている。計4回の臨時部会を計画しており、令和31月には第1回目が開催され、章立てに関する協議がおこなわれた。「大綱」は令和312月の完成を目標としている。

「大綱」の文化財防災に関わる内容は、平常時の文化財の防災および災害発生時の対応を軸とし、県内各市町との連携を重視する。未指定を含む文化財を把握、ならびに天然記念物等を含む文化財のハザードマップ作成に取り組むこととする。平常時から実施できる予防に重きを置く大綱を作成中である。

・県庁内外機関との連携について

県立の博物館・美術館等は文化課の所管であるため、災害発生時に円滑に連携して活動できる体制となっている。一方、県博協や史料ネットとの連携はこれからの検討課題である。九博からは、災害時の文化財の一時保管場所について、平常時より想定しておくことを提案した。

・平成307月豪雨(西日本豪雨)時の対応について

平成30628日から78日にかけて、西日本を中心に活発な梅雨前線等の影響による集中豪雨が発生した。佐賀県では豪雨発生後から、国および県指定文化財を中心とする文化財の被災状況の確認が進められた。国の史跡「勝尾城筑紫氏遺跡」(鳥栖市)および特別史跡「基肄(椽)城跡」(三養基郡基山町)における被害が甚大で、市町による確認に時間を要した。また、外部協力者と連携しつつ、人命救助と文化財レスキューを並行して災害復旧を進めるあり方を検討することが今後の課題として浮き彫りになった。九博は、県で一括して情報を集約することの有効性や、史料ネットと協力している他地域の体制についての情報提供をおこなった。

・歴史的建造物の保全について

未指定の建造物については、建築士会(ヘリテージマネージャー)との情報共有によって把握している。平成29年度より9年間の計画で、旧街道沿いの建築物など県内の文化財を把握するための調査である「歴史の道調査事業」を実施している。これは直接防災と関わる事業ではないが、こうしたデータを防災にも活用していくつもりである。九博からは、今後、有事の際の動産と不動産の協力関係を充実させる動きについて情報共有をおこなった。